2011年12月18日日曜日

儲けたいなら、アフリカに投資すべき

儲けたいなら、アフリカに投資すべき
“アフリカのノーベル賞”創始者、モ・イブラヒム氏に聞く
大竹 剛


企業がアフリカ市場への参入する際のリスク要因は、数多くある。政治情勢や治安、法整備、経済状況、教育や健康などの生活水準…。これらのリスク要因、言い換えれば、その国の統治品質(ガバナンス)の良し悪しが、ビジネスの成否を大きく左右することになる。

 このアフリカ諸国のガバナンスを指数化し、統治品質の改善に大きな貢献をした統治者を表彰しているのが、モ・イブラヒム財団である。モ・イブラヒム財団が授与するモ・イブラヒム賞は、「アフリカのノーベル賞」とも言われ、選考委員には国連前総長のコフィ・アナン氏などが名を連ねる。

 財団を設立したモ・イブラヒム氏は、スーダン出身の英国人。アフリカで携帯電話事業者セルテル・インターナショナルを1998年に創業し、2005年に34億ドル(約3000億円)で売却して富を築いた。その私財を財団につぎ込み、アフリカのガバナンス改善のために世界中を飛び回り精力的に活動している。イブラヒム氏に、現在のアフリカのガバナンス、ならびにアフリカでビジネスを成功させる秘訣を聞いた。



まず、モ・イブラヒム財団を設立した理由を改めて教えてください。

イブラヒム 今、アフリカ諸国が直面している最も大きな問題が、ガバナンス(統治)です。私たちは、アフリカは極めて豊かな大陸だと信じています。人口はわずか9億5000万人ですが、天然資源はおそらく、世界の4分の1くらいを埋蔵している。

 しかし、その一方でアフリカ人は貧しい。なぜ、豊かな大陸に住む人々が貧しいのか。唯一の答えは、ガバナンスが悪いからです。アフリカは、もっとガバナンスを改善しなければなりません。開発や法、透明性、民主主義、そして教育や健康など人間開発にもっと注意を払うべきです。私たちは、ガバナンスの水準を改善することに貢献したいと考え、財団を設立しました。

 ―― 今のアフリカのガバナンスで、最も問題となっているのは何でしょうか。

 たくさんありますが、まず1つは、汚職の問題です。多くのアフリカの政治リーダーは、汚職はしていませんし、私腹を肥やすために他人を犠牲にするようなことはしません。しかし、一部には、確実に汚職は存在します。

 そして2つ目が、賄賂をもらう側があれば、それを渡す側があるということです。それは、企業です。

 アフリカの汚職を批判する声を多く聞きますが、その多くは賄賂を渡す企業への批判が欠如している。汚職には常に2つの側面があり、一方だけを批判するのは公正ではありません。政府のガバナンスを改善するのはもちろんですが、同時に企業のガバナンスも改善しないと、汚職の悪を根絶することはできません。

南アフリカの順位は5位、それは悪くない
2006年に財団を設立して以来、アフリカのガバナンスは改善していますか。

 改善しています。私たちは53カ国のガバナンスを、85種類の指標を使って厳密に分析しています。その結果は、毎年、少しずつですが、確実に良くなっています。重要なことは、この傾向を持続させることです。政府がどのように統治しているかという情報は、市民が声を上げる重要な手助けになります。政治家や政党に対してガバナンスを改善するように、プレッシャーをかけることが必要です。



ワールドカップを開催する南アフリカは、イブラヒム指数では第5位です。南アフリカの現状をどのように評価しますか。

 5位は悪くはないでしょう。それぞれの国は、固有の歴史と問題を抱えています。例えば1位のモーリシャスは、安定した民主主義の長い歴史があります。小さな国で対立も限定的で、協調を取りやすい。一方、南アフリカは、ひどい遺産を引き継いでいます。アパルトヘイト時代からの貧困やタウンシップ(アパルトヘイト時代に定められた黒人居住区)などがその例です。それを踏まえれば、5位は悪くない。

犯罪率の高さは残念だが、ワールドカップは成功する
南アフリカはアフリカ最大の経済大国です。ガバナンスでも、他のアフリカ諸国の模範になるべきではないでしょうか。

 南アフリカは、人口ではアフリカ最大ではありませんが、確かに経済ではトップです。その点でいえば、南アフリカは、アフリカ、特に南部アフリカの成長のエンジンになることが重要でしょう。

 この国の民主主義は問題ありませんし、裁判所もうまく機能している。報道の自由もあります。ただし、経済成長の恩恵を受けられない人たちが残されていることも事実で、貧困をいかに解決していくのかは大きな課題です。

 しかし、ワールドカップは成功すると確信しています。W杯は、南アフリカだけではなく、アフリカに大勢の人の注目を集める、素晴らしい機会です。アフリカは、ひどい場所ではない、素晴らしい場所だと、多くの人が認識してくれることを期待しています。

多くの人が、南アフリカ、特にヨハネスブルクは危険な場所だと考えています。企業でも、この国に参入を躊躇するところがあるほどです。

 残念ながら、南アフリカ、特にヨハネスブルクの犯罪は多い。その背景には失業率の高さもあり、政府にとっては大きな課題です。

 南アフリカが5位に甘んじている要因の1つは、残念ながらこの犯罪率の高さです。しかし、南アフリカの多くの場所が安全なこともまた、事実です。ヨハネスブルクでも、暗闇を1人で歩かないとか、油断しないとか、そういう注意をしていれば問題ありません。

メディアが作り出した「アフリカ=貧困と暴力」
他のアフリカ諸国についても、暴力と貧困のイメージが世界中に広がっています。

 アフリカは一般的に、魅力的な投資先です。ほとんどのアフリカ諸国は民主主義がありますし、安全です。投資にも間口を開いています。しかし、残念なことに、多くの人がアフリカに対して非常に悪い印象を描いている。

 例えば、日本のテレビを見てください。何分、何秒、アフリカのことがニュースで流れますか? もし1分、時間を与えられたら、テレビ局はソマリアの海賊やダルフール紛争を取り上げるでしょう。それだけです。その結果、アフリカと言えば、暴力と貧困のイメージだけが残る。しかし、ソマリアがどこか、ダルフールがどこかを、どれだけ多くの人が知っているでしょうか。ほとんど、アフリカの実態が伝わっていないのが現実なのです。

 ほかの大陸でも、いくつかの地域や国は問題を抱えているでしょう。しかし、それでその大陸のすべてを語ることはない。私たちは、アフリカについても公正な報道をしてほしいと願っています。アフリカにも問題はあります。しかし、同じようにサクセスストーリーも平和な人々も、素晴らしい音楽もたくさんある。アフリカはとても楽しい場所なのに、それがメディアで伝わらない。

寄付はアスピリン、投資促進こそ重要
ワールドカップは、アフリカの新しいイメージを作り出す触媒になるでしょうか。

 そう願っています。非政府組織(NGO)など多くの組織が、貧困から子供や母親を救うために先進国で寄付を募っている。その写真を、皆さんも数多く目にすることでしょう。しかし、私たちは寄付をするだけで、その国へ行かず、そこに投資しない。それで良いのでしょうか。私は、もっと投資を促進すべきだと考えています。それは、寄付より重要なことです。



寄付は、(痛みを一時的に止める)アスピリンみたいなものです。一方、投資は社会を根本的に変える。日本の読者の皆さんには、過去のオリンピックやスポーツイベントで、アフリカ人が極めて健康で、誰よりも早く走り、誰よりも高く跳んでいたことを、ぜひ思い出してほしい。

 アフリカ人は、ごく普通の人間だと考えてみてください。ただ、偶然に黒く生まれただけ。それだけです。そう考えさえすれば、暴力や貧困に塗り固められた恐ろしい印象は、いつの日か、消え去ると期待しています。

ニーズも顧客も従業員も土地もある
なぜ、アフリカへの投資は魅力的なのですか。もう少し詳しく説明してください。

 アフリカは、投資に飢えています。道路、発電所などのインフラはいたるところで足りません。農業にも、大きな可能性があります。現状では農業の活動は低調です。土地も水もたくさんあるのに、適切な種と技術とノウハウがない。そのため、土地の生産性は極めて低い。それはつまり、これから飛躍的に発展する可能性があるということです。

 サービスもすべて足りません。銀行などの金融サービスは、まだまだやるべきことがたくさんあります。社会はそうしたサービスを渇望している。私が携帯電話会社を立ち上げた時、アフリカの人々は販売店の前で列をなしました。携帯電話の在庫が尽きるのではないかと心配したほどです。アフリカには、ニーズがあります。顧客も従業員もいます。土地もあります。素晴らしいビジネスチャンスだと思いませんか。

認識と現実のギャップが生むビジネスチャンス
携帯電話会社「セルテル」を立ち上げた経験から、アフリカでビジネスを成功させるには、何を理解すべきか、教えてください。

 1つは、アフリカに対する認識と現実との大きなギャップです。これが、大きなビジネスチャンスになるということを理解してください。アフリカは事業をするのが難しい場所だと思われている。しかし現実はそれほど悪くはない。私が事業を立ち上げた時は、海外のライバルはほとんど参入してきませんでした。なぜなら、彼らはアフリカの現実を知らなかったからです。

 2つ目が、賄賂を払わずにも、ビジネスはできるということです。私は、事業を始めたその日から、賄賂は一切払ないと明確に決断しました。簡単なことでした。「3万ドル以上の小切手を切る場合、会社の経営メンバーのサインが必要」と言うルールを決めたのです。その結果、誰も私の会社の社長やマネージャーに、賄賂を要求することができなくなった。

 3つ目が、アフリカの経済成長予測は、常に現実を大きく下回ってきたということです。これは、事業計画を練る上では大きな問題ですが、見方を変えれば非常に良いことです。

日本人よ、勇気を持て
しかし、日本企業の多くは、まだアフリカは遠いと考えています。アフリカを市場として、投資先として考える際、何を重視して参入の是非を判断すべきでしょうか。

 私は、日本のビジネスマンにもっと、勇気を持ってほしい。なぜ、中国人がアフリカ全土で活躍しているのか考えてみてください。中国人ビジネスマンは、日本人ビジネスマンほど恵まれていません。中国の“資本主義”はまだ生まれてから日が浅いのに、なぜ、これほどアフリカに展開しているのか。それは、中国政府が後押ししているという理由だけでは説明が付かないはずです。

 日本の企業やビジネスマンは、少し保守的すぎるのではないでしょうか。彼らは、自分たちが安全だと思うことしかやりたがらない。かつて、日本が米国に投資した時のことを思い出してください。ニューヨークのど真ん中のビルや伝統的な映画会社など、誰が見ても米国の象徴的な資産しか投資しようとしなかった。しかし、その投資の結果は散々だったでしょう。

 どうか、想像力をたくましくして、いくらか勇気を振り絞ってください。それは、日本人にとって挑戦でしょう。しかし、もし、お金儲けがしたいのであれば、アフリカに来るべきです。米国の不動産を買っても、もう金儲けはできないのですから。




最後まで読んでくれてありがと~~~♪

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2 件のコメント:

ブリッジ さんのコメント...

なるほど~やねぇ。。。

Mia さんのコメント...

ブリッジさん

興味深いやろ?
私も、このイブラヒムさんが感じているよに、アフリカには、まだまだ、先進国に追いつくまでには、いろんなビジネスチャンスがあるな~。と感じてるの。
私の分野では、確実にホスピタリテー精神マインド。人間教育。
人間を育てることで、大きく変るし、可能性が見出せる気がする。
本間、ケニアの銀行腐ってるし。
日本でも、銀行には既にホスピタリティーが取り入れられてるしね、とっくの前から。
そういう時代なんだよ、人間が求める生活する上での、心地よさを求めると。
個人的意見やけどね。
まづ、模範して、見せる、わからせる必要があるよね。