2011年7月29日金曜日

国境なき医師団

http://www.msf.or.jp/news/2011/07/5275.php

アフリカ北東部「アフリカの角」にあるソマリアでは、子どもの栄養失調が深刻化している。国境なき医師団(MSF)は現在、同国や近隣国で重度の栄養失調児1万人以上を治療しているが、昨年と比べて患者が7倍に増加した地域もある。MSFは、ソマリア国内における独立した援助の拡大を阻む要因を解消し、援助を強化するために、緊急に具体的な措置を講じるよう、ソマリア、近隣諸国ならびに国際社会に対して訴える。


「アフリカの角」で発生している深刻な干ばつは、家畜の命を奪い、食料価格の高騰に拍車をかけている。20年以上も無政府状態が続き、多様な問題が複雑化しているソマリアで、窮地にある人びとのニーズを全面的に調査し、緊急援助を拡大するためには、独立した即時介入が不可欠である。

同国内では、国際的な援助団体が活動を制限されていることにより、人びとへの緊急援助が必要以上に遅れている。ジュバ渓谷の下流地域などいくつかの場所では、食料を求めて故郷から逃げ出してきた5000人以上の人びとが、突発的に仮住まいの避難所を作って生活している。

オランダ事務局長の、アルヤン・ヘヘンカンプは語る。
「ソマリア各地で、MSFの治療センターは収容能力の限界を超えています。昨年と比較すると、1週間に受け入れた患者の数は、7倍にのぼる地域もあります。現在、MSFはソマリア国内で3000人以上の5歳未満の栄養失調児を治療しており、そのうち約600人を集中治療センターで治療し、2500人以上を通院栄養治療センターで受け入れています。新規患者へ滞ることなく治療を提供し、栄養失調が深刻化しているすべての地域で活動できるよう、多方面からの支援が必要です」

ソマリア国内では、充分な援助を受けることが難しいため、多くの人びとは隣国ケニアやエチオピアにある難民キャンプへと脱出し、庇護(ひご)を求めている。現地で活動しているMSFのチームによると、新たにキャンプへ到着した人びとのうち、3人に1人の子どもは急性の栄養失調を患っているなど、この病気への罹患(りかん)率が非常に高い現状が報告されている。

ケニア北東部のダダーブやエチオピア南東部のドロ・アドにある難民キャンプは、長期にわたり多くの人びとを受け入れ続けた結果、現在は人口過密で混乱した状態に陥っている。また、ケニア―ソマリア間の国境の閉鎖や、キャンプでの新規受け入れ時に事務手続きが遅れるなど問題が山積しており、人びとは十分な援助が得られずにいる。

MSFのオペレーションディレクター、クレマン・カブロルはこう説明する。
「ソマリアから逃れてくる人びとの大半を受け入れているケニア、エチオピア両国は、キャンプを増設し、既存の施設を改善する必要があります。しかし、国際社会もまた、ソマリアから逃れてくる人びとが、迅速な事務手続きのもとに適切な食糧援助を受け、難民キャンプの中に居住できるよう、責任の一端を担うべきです。現在、役所の都合による制限で、人びとへの援助は必要以上に遅れています。今すぐに、すべての手段を講じて、緊急事態に対応しなければなりません」


MSFは、ソマリア国内8ヵ所で、1991年から無償で医療を提供している。1400人以上のソマリア人スタッフと、ナイロビに駐在する約100人のスタッフが、一次医療、栄養治療、外科治療と避難民の人びとへの医療・人道援助を提供している。また、同国中南部の9ヵ所では、水と衛生に関する援助を提供している。MSFの、ソマリアでの活動費はすべて民間からの拠出で支えられており、いかなる機関もしくは政府による資金援助も受けていない。


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ネンナ・アーノルド看護師は、ケニア北東州のダダーブでアウトリーチ活動*を行っており、隣国ソマリアから、暴力、不安定な情勢、そして壊滅的な干ばつを逃れてきた大勢の難民のケアにあたっている。彼女が国境なき医師団(MSF)から派遣されるのは、これで4回目だが、今回はこれまでで最大規模のプログラムであり、最大の挑戦でもある。

*アウトリーチ活動:こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること。


「難民たちは生きていくための最低限の物資で命をつないでいます」

「初めに、MSFの渉外担当であるアブーから、ここに到着したばかりの人が大勢いて、難民キャンプの周囲に定住しようとしていることを聞きました。昨年9月のことです。そこで私たちはすぐに、"状況を調査する"ために、こうした人びとの様子を見に行きました。ただし、それは単なる"状況"ではありません。私たちには想像もつかないような環境の中で生きている人びとのそのものなのです。仮住まいもビニールシートもなく、食糧もほんのわずかです。身を守るものがないため、子どもがハイエナに殺されることさえあります。男性は昼間眠り、夜は家族を守ろうとします。一方で、不幸にも、男手のない家族の女性たちは、ハイエナよりもさらに大きな心配の種が尽きないと漏らしています。

こうしたソマリアからの"新規到着者"たちは、ほとんどが徒歩で、ここまで長い旅をしてきました。中には途方に暮れたり、おびえたり、頭が混乱したりしている人もいます。激化する暴力から逃れて、ソマリアの首都モガディシオから16日間歩いてダガレイまでやって来たばかりという人もいます。ほとんどの人は暴力によって家族を失っており、レイプや殴打の被害にあった人もいれば、負傷者や、手足を失って到着する人もいます。安全を求めての旅の途中で、家族を失った人もいます。多くの人にとって、その旅自体が、逃れてきたはずの混乱状態と同じくらい危険だったのです。野生動物、強盗、気候、病気、飢え、渇き。彼らは何の蓄えも持たずに家を後にしています。食糧も、水もありません。

あるのは身につけてきた服だけです。中には運よく、貯水容器や鍋などの小間物を1つ2つ持ち出せた人たちもいますが。

新しく到着した人びとが定住を始めている地域で重点的に活動を行っているスタッフは、そうした地域の状況は人道的危機だと感じています。難民たちは生きていく最低限の物資で命をつないでいるのです。



患者の発見と搬送、定期予防接種、仮設診療所の設置

到着する難民の多くは健康を損ねています。食糧の配給を受けられるようになるまで2週間かかる場合もあり、年齢を問わず栄養状態は極端に悪いのですが、特に子どもの状態は深刻です。私が着任してまず初めにしたことは、地域医療従事者のグループを編成して子どもと妊婦の調査に向かわせたことです。MSFの車両の後部に、多くの栄養失調児や病気の子どもをはじめとする患者たちを乗せ、その病状の程度に応じて診療所または病院に降ろしました。私たちは問題が生じている若い妊婦を見つけました。子どもは亡くなりましたが、彼女の命は助かりました。これとは別に、病気の乳児を病院に運びましたが、既に手遅れで手の施しようがありませんでした。しかし、助かる可能性のある人も大勢います。

私たちはまた、定期的に予防接種も行っています。拡声器を持って地域医療従事者のチームとともに新たに到着した人びとが暮らす地域を訪れ、木陰にテーブルを置いて予防接種を行います。最近では、2日間の午前を使って257人の子どもに予防接種を行いましたが、そのほとんどが今まで予防接種を受けたことがありませんでした。この活動によって、病気の大流行を防ぎ、命を脅かしたり人生を変えてしまいかねない病気から子どもを守ることができます。

私たちは新たな難民が暮らす地域に仮設診療所を建設するよう提案し、3月に開設されました。そこで暮らす人びとのうち1万人近くは、既存の診療所まで遠かったり、キャンプの配置や利用できるサービスがまだわからなかったりして、それらの診療所に行くことが困難でした。新たな診療所を開設した初日、私たちは165件の診療を行い、栄養治療プログラムに98人を受け入れました。以来、1日あたり平均110件の診療を行っています。



自分が成し遂げられることに集中すること

やるべきことの膨大さに圧倒される思いのする時もあります。そういう場合には自分が成し遂げられることに集中しようと努めています。手遅れになる前に早い段階で診療所へ搬送するべき人を発見できるよう、地域医療従事者を指導すること。傷口が感染したり順調に治っていなかったりする場合に報告できるよう、包帯交換を行うスタッフを指導すること。診療所のスタッフ100人と78人の地域医療従事者をマネジメントすること、などなど。休日はほとんどなく、あっても短い時間のみです。

さまざまな困難はありますが、私は自分がプログラム全体で最高の仕事を与えられていると思っています。私は人が好きです。新たに到着した人びとが暮らすこの地域に来て、本当に援助を必要としている人びとの力となれるのは、素晴らしいことです。

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ケニア:受け入れの限界──世界最大のダダーブ難民キャンプからの報告


ケニア北東州のダダーブ。この不毛の荒地に設けられた3つのキャンプ(ダガレイ、ハガデラ、イフォ)は、総称して"世界最大の難民キャンプ"として知られています。暴力と内戦により80km離れた隣国ソマリアからこのキャンプに逃れてきた人びとは、35万人以上。既にキャンプは飽和状態にもかかわらず、新たに到着する難民の数は増加の一途をたどり、キャンプに入れない3万人の人びとは周辺に一時しのぎの小屋を作って暮らしています。国境なき医師団(MSF)は1992年からケニアで医療を提供、ダダーブの難民キャンプでは通算14年間活動しています。

最低限の暮らしまでの長い道のり
難民のほとんどは女性と子どもであり、到着したときには、お金も、食糧も、水も、身を寄せる場所もない。キャンプを運営する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から食糧の配給を受けられるまでに平均で12日、調理器具や毛布を受け取ることができるまでに34日かかっている*1。それまで、彼らは厳しい環境の中で何とか自力で生活しなければならない。

*1:MSFが2011年1月にキャンプの敷地外に自力で定住した687世帯を対象に行った調査による。

50度に達する気温の中、ハイエナの襲撃を恐れて、難民はキャンプ周辺の砂漠に一時しのぎの小屋を建てる。主に枝や下生えを束ねてドーム形の骨組みを作り、ダンボール紙やビニール、破れた布などで覆う。容赦なく照りつける太陽や息を詰まらせる砂ぼこりから少しでも身を守るために、使えるものは何でも使う。


1つの都市に匹敵する規模のキャンプ
ダダーブのキャンプは、不毛の砂漠に囲まれている。ここに設けられた3つのキャンプ(ダガレイ、ハガデラ、イフォ)は、総称して"世界最大の難民キャンプ"として知られている。暴力と内戦から逃れてきたソマリア人を9万人まで受け入れることを想定して、20年前に建設された。しかし紛争に終わりが見えず、現在では35万人以上*2がキャンプの一帯にひしめき、新たに到着する難民の数も急増している。今年に入って新たに4万4000人の難民が登録されており、今年中に、キャンプの人口はジュネーブの2倍にあたる45万人に達する可能性がある*3。

*2:UNHCRの統計より。

*3:UNHCRの予測より。

キャンプと周辺の砂漠にますます多くの人が集まるにつれて、水や衛生設備、教育といった基本的なサービスが十分に行き届かなくなり、生活環境は急速に悪化している。

キャンプの1つ、イフォでは、4万人を受け入れられるよう拡張が計画され、新たに到着した難民に仮住まいを提供できることが期待されたが、ケニア当局とUNHCRとの交渉が決裂したために建設は中断していて、用地は無人である。

「着の身着のままで避難してきました」
マハムドは前の晩に妻と5人の子ども、夫を亡くした母親とともに到着した。一家はマハムドの女きょうだいがこれまで3ヵ月前から暮らしている砂漠の小屋に身を寄せている。マハムドは言う。
「ここに来るのに9日間かかりました。着の身着のままで避難してきました。ソマリアでは農民として暮らしていましたが、干ばつで家畜はみな死んでしまいました。私たちの村では戦闘はありませんでしたが、武装勢力のグループが村を支配し、私たちに税金を払うよう要求していました。私は払うことができず、そのため村を離れる決意をしたのです。途中で止められてケニアへの入国を止められるのではないかと恐れ、身を隠しながらここまでやって来ました」

国境付近は無法地帯で治安が悪く、通過する多くの難民が、格好のえじきとして暴力行為やゆすり、嫌がらせの被害にあっている。

MSFは新たな難民の医療ニーズを観察
こうした苦難を乗り越えてキャンプにたどり着いた難民のほとんどは、健康状態に問題を抱えている。ソマリアの医療制度はほぼ崩壊状態にあり、国民の大半は何年にもわたって通常の医療を受けられずにいる。干ばつによって健康状態はいっそう悪化し、多くの人びとが緊急に治療を必要としている。新たな難民の数が増えるにつれて、難民キャンプの医療サービスにかかる負担も増している。

国境なき医師団(MSF)のネンナ・アーノルド看護師は次のように語る。
「これからもさらに難民が到着します。もう受入れの限界に達していますが、難民の数は増え続けています。この状況は、人道的危機です」

アーノルド看護師は、新たな難民の医療ニーズを観察する役割を担っている。これを助けるのが、全員ソマリア人の地域医療従事者78人のチームである。毎日、アーノルド看護師とチームは治療を必要とする人びとを探し出すためにキャンプ内と周辺地域に出かけている。特に症状の重い人(中程度から重度の栄養失調児多数を含み、合併症を伴うことが多い)は、MSFが運営する診療所の1つか、MSFがダガレイ・キャンプ内で運営しフル稼働している総合病院へと直ちに搬送している。

集団予防接種の必要性
新たな難民たちのニーズが急激に高まっているため、MSFはスタッフと物資を急いで増やしている。先月、診療所のスタッフは1万1963件の診療を行った。主に見られる病気は、呼吸器感染、下痢、結核、栄養失調、外傷であり、合併症を伴う患者も増えている。3月には、新たに到着した難民が住み始めている地域の中心部に診療所を新設し、既に1日平均110件の診療を行っている。10月以降に増員したスタッフは50人を超え、ダガレイ・キャンプで活動するスタッフの合計は458人に達している。

この地に到着する子どもの40%はこれまで予防接種を受けたことがなく、栄養不良と劣悪な生活環境も相まって、健康が大いに脅かされている。砂漠の木陰などで手早く行える集団予防接種が、病気の大流行を未然に防ぐ助けとなっている。

ベッドがひしめく病棟
MSFがダガレイ・キャンプの中心部で運営するベッド数170床の病院でも、圧力が高まっている。外国人派遣スタッフ、ケニア人スタッフ、ソマリア人スタッフが無償の医療を提供しているこの病院は、キャンプで暮らす11万3000人の難民および続々と砂漠に定住する新たな難民たちにとって、唯一の機能している病院である。病院のゲディ・モハメッド医師はこう語る。
「最近まで、ベッドの稼働率は平均で80%でした。しかし、新たな難民の到着と共に、今では110%に達しています」

産科病棟では、前年の同時期と比べて分娩件数が倍となり、先月だけで308件に上った。通路には予備のベッドがひしめいている。医学的な問題を伴う重度栄養失調児のための入院集中栄養治療センターは満員となったため、当初は病院の敷地内にテントを設置していたが、5月からはベッド数60床の病棟を増築して対応している。ここで入院治療を受けている栄養失調児は80人で、さらに782人が通院ベースの栄養治療プログラムによって治療を受けている。7000世帯を超える家族が、栄養補給プログラムによって食糧の配布を受けている。新たに到着した難民の多くは恐ろしい体験から心的外傷を負っているため、心理ケアプログラムはこれまで以上にニーズが高まり、先月は964人の患者が心理ケアを受けた。


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MSFは1992年からケニアで医療を提供しており、ダダーブの難民キャンプでは通算14年間活動している。2009年からは、ダガレイ・キャンプで唯一の医療提供者となっており、5ヵ所の診療所とベッド数170床の総合病院で、キャンプの住民11万3000人に医療を提供している。




最後まで読んでくれてありがと~~~♪
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2 件のコメント:

しーちゃん先生 さんのコメント...

こんどケニアに行くのですが、ケニアの情報を得ようとブログを読ませていただきました。
自分の知らない事がたくさんあり、すごく勉強になりました。ありがとうございます。

Africious さんのコメント...

しーちゃん先生 さん

こんにちわ。

そうのようにコメントくださって、こちらも嬉しく感じます。
安心してケニアに来てください。
しーちゃん先生 にとって、ケニア生活が楽しい時間となりますように。

またいつでも、ブログに立ち寄ってくださいね。