アリババと40人の盗賊(2)
アリババはロバの背にふくろをのせて家に帰り着きました。アリババの妻はふくろに入った大金を見ると、おどろいて、どうしてよいかわからなくなりました。アリババはかの女のわきにすわり、どこで財宝を手に入れたかを話して聞かせました。そして、この秘密をだれにも言わないように命じました。かの女はあまりのことにおどろきがさめず、夫にこう聞きました。
「こんな大金を、どこにかくしたらいいのでしょう?」
するとアリババは答えました。
「穴を深くほって、その中に隠そう。」
しかし、かの女は夫に、まずそのお金を数えさせてほしいと言いました。そして金貨を両手いっぱいにすくい上げ、指の間からバラバラと落ちるさまを見つめました。そしてかの女は、「一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚……」、と散らばった金貨を数え始めたのです。それを見てアリババは、「もういい。みな数えるのは時間がかかるじゃないか。ここにはものすごい数の金貨があるのだから。」と言って、妻を止めました。
それから妻は夫に穴をほってくれと言い、自分はアリババの兄カ-スィムのところへ、その金貨を入れておく箱を借りに行きました。かの女はその金貨がいったい、どれぐらいあるものか知りたいと思ったのです。そこでアリババは出かけようとするかの女にささやきました。「なぜ箱が必要なのかを、かれらに知られないように気をつけなさい!」
アリババの妻が夫の兄カ-スィムの家へ行くと、カースィムは留守で、家にはかれの妻がいました。そして用事を聞くと、夫の弟の妻にこうたずねました。「なぜ、箱が必要なのですか?」
そこでアリババの妻は答えました。
「粉をその中に入れるためです。それに……うちにある粉の量を知りたいと思うので、それを量るコップも貸していただけませんか?」
するとカ-スィムの妻は、言いました。
「喜んで。すぐにご入用のコップを取ってまいります。でも、使い終わったらどうか返してくださいね。」
そして、カースィムの妻はひとりごとを言いながらコップをとりに行きました。
「どこでアリババの妻はその粉を手に入れたのだろう? かれらはほんの少ししかお金を持っていないのだから、わずかな粉も買えないはずなのに。その訳(わけ)をはっきりさせなくては。そう、いい考えがあるわ。」
かの女はコップを取り、そして、コップの底の気がつきにくい所に、ロウを少しぬっておいたのです。
アリババの妻は、箱とコップを持って大急ぎで家に帰り、そして言いました。
「まず、このコップをいっぱいにしたら、いくらのお金が入るのだろう。そして、コップ何ばい分でこの箱がいっぱいになるのだろう。そんなふうにしていけば、このお金ぜんぶ数えられるわ。」
こうして二人で量り出しました。それで、その箱にはコップ40ぱい分のお金が入り、そして、そのふくろには箱3つ分のお金が入ることがわかりました。
そしてお金がつまったそのふくろは3つもあったのです! なんと高価な宝物(たからもの)でしょうか! そのすべてがお金なのです。なんと幸せなことでしょうか!
すると、アリババの妻は、「もうコップを返さなければなりません。」と言い、カ-スィムの家に向かいました。その時、コップの底に金貨が一枚(まい)だけ残っていたのですが、かの女はまったく気がつきませんでした。
カ-スィムの妻はコップを受け取ると、手の上でそれを裏返しました。するとコップの、底に金貨が一枚くっついていたのです。
やがて夫が店から帰ってくると、かの女は少しはお金をかせいだのか、とかれに聞きました。しかしカ-スィムは、「全然。今日はあまり売れなかった。」と言いました。
そこで妻は皮肉たっぷりにこう言いました。
「アリババのところにはお金がたくさんあるというのに。」
それを聞くとカ-スィムは言いました。
「何を言うのだ? おまえはアリババが文無しの貧乏人だということを知っているじゃないか」
すると、妻は大声で笑いながらこう言いました。
「わたしを信じなさい。アリババはあなたよりずっとお金持ちなのですよ。かれは家にある金貨を入れるのに、大きな箱が必要だったのですから。」
そして妻は、そのことをどうして知ったのかを夫に話しました。しかし、カ-スィムはそれを知っても喜ぶ気持ちになれず、アリババがどこでその金貨を手に入れたのかを聞こうと思って、かれの家へ出かけて行きました。
アリババは兄に金のことを聞かれておどろき、こう言いました。
「わたしがお金を持っていることをどうして知ったのですか?」
そこでカ-スィムは、かれの妻がどうやって秘密を知ったかを話しました。
それを聞いたアリババはこう言いました。
「そうだったのですか。それではあなたに本当のことを教えましょう。」
カ-スィムはどん欲な男でした。そのため、どんないきさつがあろうとも、自分がアリババほど金を持っていないことには満足できず、弟にこう言いました。
「おまえはその金貨を見つけた場所をわたしに教えなければならないよ。そうでなければ、わたしはおまえがとうぞくの一味だと警吏のところへ申し出るだろう。」
そこで、アリババは言いました。
「あなたにどうくつへの道を教えます。そこに行くと木が一本あり、そのそばに大きな岩があります。その岩の前に行って、「開けゴマ!」とさけびなさい。そうすると、すぐにとびらが開きます。そしてどうくつから出てきたら、「閉じよ、ゴマ!」とさけびなさい、そうするととびらが閉まります。あなたがすることはそれだけなのです。」
翌日、日がのぼるのを待って、カ-スィムは馬に乗り、アリババが教えてくれた場所に向かって飛び出して行きました。
かれは、できるだけ多くの金貨を取ってその全部を持ち帰りたいと思い、力の強い8頭の馬をいっしょに連れて行きました。
やがて教えられたその場所に着き、岩のとびらを見つけると、さっそく「開けゴマ!」とさけびました。するとすぐにとびらが開いたので、急いで中に入ると、かれの後ろでとびらは閉(し)まりました。
カ-スィムは金貨や宝石(ほうせき)のふくろを見ておどろきました。そして、すべてのふくろを調べてみて、「どれを取ろうか?」とひとりごとを言いました。それから、かれは大きなふくろをいくつか選び、それをとびらのところに引きずって行って、「今回これ以上持って帰るのは無理だろう」と言いました。かれの手元には8つのふくろがありました。
それからさらに低い声で、「もうできるだけ早くここを去らなければならない。ここで見つかりたくはないからな。」とつぶやきました。
かれはふくろのことばかり考えていたので、例のとびらがどうやって開くのかすっかり忘(わす)れてしまいました。かれは「開けゴマ!」ではなく「開け小麦!」と言ったので、とびらは閉(と)じたまま開きませんでした。
そこで次に「開け大麦!」とさけんでみました。しかしそれも正しくなかったので、今度は「開けオート麦!」と言いましたが、やっぱり何も起こりませんでした。
そこで、力いっぱいとびらをおしてみましたが、動きません。かれはいろいろためしてみましたがうまくゆかず、正しいじゅもんも思い出せなかったのです。
こうしてカースィムがどうくつに閉じ込められているとき、先のとうぞくたちが、また金貨のふくろを置きにどうくつにもどってきました。かれらは、外のカ-スィムの馬たちを見て、ささやき合いました。
「だれかがこのかくれ家の入り口の秘密を知ったにちがいない。われわれは、その者をにがすわけにはいかない。」
そこで、とうぞくの首領は「開けゴマ!」とさけびました。
そしてとびらが開くやいなや、カ-スィムは外に飛び出しましたが、すぐにつかまえられてしまいました。それでとうぞくたちは、思うままにかれを打ち、剣でさしたのです。それから、かれらはカースィムがもう死んだだろうと思い、どうくつの中に放り投げたのでした。
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