2012年2月11日土曜日

アラジンと魔法のランプ(3)

アラジンが目を覚ますと、お母さんがやさしくそばにいて、こう言いました。
「おまえはおなかがすいているに違いないね。わたしは今から市場へ行ってつむいだこの綿を売り、おまえの食べるものを買ってこようと思うよ。」

 しかしアラジンはそれを聞いて、「母さん、綿を売らないで、このランプを売ればいいよ。これはうちにはいらないし、このランプのせいでぼくはもうじゅうぶんくたびれたのだから。」と言うと、服の中からランプを取り出し、お母さんにわたしました。
 そこでお母さんは、「いいでしょう。」と言ってそれを売ることにし、こう言いました。
「でも、このランプはずい分と古いものねえ。みがいてきれいにしたら、もっといい値で売れるでしょうよ。」

 お母さんは布切れを持ってきて、ランプをみがこうと思いました。そして、ひとふきしたかしないかのうちに、とつぜんけむりがたち、家の中が光で輝きました。その光は、ランプの中から現れた大きな魔人の体から出て、2人を照らしていたのです!

その魔人はこうさけびました。
「わたくしは、このランプを所有する御方の召使いでございます。どうかお命じくださいませ。何でもおこたえいたします。」
 しかし、アラジンのお母さんは恐れてためらっているので、アラジンが代わりに、「わたしたちに食べるものを持って来てくれ!」と言いました。
 すると魔人はしばらく姿(すがた)を消し、それからおいしそうなごちそうが、銀皿にたくさん並べられた食卓を抱(かか)えてもどってきて、それからすぐにランプの中へと帰っていきました。

 アラジンとお母さんは、驚いて何も言わずにその食べ物に近づきました。2人とも目の前で起きたことが信じられなかったのです。しかし、やがて2人はそれらの食べ物を食べ終わりました。それから、お母さんは注意深くそれらの銀皿をまとめ、アラジンはそれを市場でいい値で売りました。かれらはそれで、2か月分以上の生活費をじゅうぶんまかなうことができたのです。

 このようにして、暮らしのお金が底をつくたびに、アラジンはランプをこすり、そのたびに召使いの魔人が銀皿に入った食べ物を持ってくるようになったのでした。

 何度も銀皿で商売をしているうちに、アラジンは段々(だんだん)と、その銀皿の価値がわかってきました。宝石商たちはその銀を手に入れようと、競って値を上げるのです。かれらがそれまで見たことのないような純度の高いその銀のために。

 また、かれらがとても高い値で店に出している宝石類も、アラジンの目をひきました。それらは、美しさから言っても大きさから言っても、かれがどうくつから持ち出した、木々にぶら下がっていたあの実と比べれば、まったくたいしたものではなかったのです。
 それを見てアラジンは、自分がとても大きな財産を持っていることを悟ったのですが、そのことはまだ秘密にしておくことにしました。

 こうして、幸せで平穏な年月が過ぎていったのですが、ある日のこと、アラジンは市場にいた時、王さまの一人娘が侍女たちや護衛の者たちとともに、買い物をしているのを見て、一目で恋に落ちてしまったのです!

 アラジンは心が乱れてぼんやりしたまま家に帰ってきました。そこでお母さんが、「息子や、どうしたのだい?」とたずねると、かれは心の中にあることを告白しました。
「母さん、ぼくは王さまの娘と結婚(けっこん)したいんだ。わたしのために、かの女との結婚の申しこみをしてきてください!」
 それを聞いたお母さんは笑い出し、こう言いました。
「何てことだろうね、息子よ! おまえはきっと頭がどうかしたに違(ちが)いない。王女さまと結婚するなんて、おまえは一体何者で、何を持っていると言うの?」

 するとアラジンはそれには答えず、自分の部屋に入り、それからどうくつで着ていた服を持って出てきて、驚いているお母さんの目の前に、そのポケットにあるものを全部出して見せたのです。そしてかれはこう言いました。
「母さん、明日、王さまのところへ行って、わたしのために、王さまの娘(むすめ)との結婚を申しこんできてください! わたしからの贈(おく)り物としてこれらの宝石を差し出せば、王さまもきっと良い待遇をして下さることでしょうから。」

 こうして翌日、アラジンのお母さんは、ふくろに入ったアラジンの宝石を持って、王さまの城(しろ)へ向かいました。
王さまは週日のほとんどを、用件や頼みごとのある者たちと面会して過ごしていました。そこでアラジンのお母さんもすわって自分の順番を待ちました。

 やがて侍従がかの女を呼(よ)び、王さまの前に出るように言うと、かの女はふるえながら、遠くからこう言いました。
「国王へいか、わたしのお願いは奇妙(きみょう)なものでございます。ですから先に、そのことを謝(あやま)っておきたいと思います。ですが、わたしの息子がその願い事をあきらめようとせず、わたしがここでそれをお願いしてくれなければ、自分は気が狂ってしまう、などと言うものですから……。」

 すると王さまはかの女を安心させ、このように言って励ましました。
「あなたの願いを言いなさい、ご婦人よ。何も恐れることはない。」
 そこでアラジンのお母さんは、おそるおそるこのように言ったのです。
「国王へいか、わたしの息子は、自分のために、へいかのお嬢さまとの結婚を申しこんできてほしいと言うのでございます!」
 すると王さまは思わず笑い出し、話の流れを変えようと思って、とりあえずかの女にこうたずねました。「ところで、そのふくろの中には何が入っているのだね?」
 するとかの女は、こう言いながら王さまにふくろの中のものを差し出しました。
「息子は、これをあなたがたにお贈りすることを光栄に思っております!」

 王さまは、ふくろいっぱいにつまったその輝く宝石の美しさに驚き、すっかり気に入りました。かれはそのような宝石をかつて見たこともなかったからです。そこで、そばにひかえていた宰相に、このようにささやきました。
「宰相よ、このような驚くべき高価(こうか)な宝石を差し出すことができるかの女の息子は、わたしの娘に結婚を申しこむにふさわしい人物だと思われるが、君はどう考えるだろうか?」

 宰相はしばらく考えていました。じつはこの宰相は、自分こそが王女と結婚したいと強く望んでいたのです。そこでかれは王さまに、ひそかに何事か言いました。

すると、王さまはアラジンのお母さんのほうに向き直り、こう答えました。
「宰相の言うとおりである! われわれに近くありたいと望む者は、この宝石よりもさらに多くの物により、自分がそれにふさわしい者であることを証明(しょうめい)しなければならない。そう、たとえば、あなたが持ってきたそのふくろの40個分ぐらいのものは差し出さなければ。もしもあなたの息子がそうできるというのであれば、その時にはわたしも、本当にわが娘と結婚させたいと思うだろう。」

 ここで、しっと深い宰相がふたたび王さまに何かささやくと、王さまはさらにこう続けました。
「うん、そうだな……。それからあなたの息子は、わたしの娘のために、われわれの城(しろ)の豪華さに負けないような住まいを、この城のすぐそばに建ててやらなければならない。それも、明日の夜までに。」

 アラジンのお母さんは、このとんでもない求めは、つまり断(ことわ)りの意味なのだと受け止め、悲しい気持ちで家にもどりました。しかしその後、がっくりした顔ではなく、うれしそうな顔でスルタンの求めを聞き入れたアラジンを見て、お母さんはとても驚いたのです!

 アラジンはさっそくランプに向かい、それをこすりました。するといつものように、光の中にランプの魔人(まじん)が現(あらわ)れ、こう言いました。
「やってまいりました、ご主人さま!」

 アラジンは魔人に向かってこう言いました。
「ランプの召使いよ、よく聞きなさい! わたしは、宝石がいっぱいにつまったふくろ40個と、それを運ぶ召使い40人がほしいのだ。それから、わたしのために、将軍が着るような豪華で立派な衣しょうを用意してくれ。それと最も良い馬、そして100人の騎兵隊と1000人の歩兵隊からなる従者たち、それから母のために最も美しい装飾品と衣しょうと20人の侍女たちを。また、わたしたちに4万ディナールの金貨を別に持たせてくれ。」

 魔人はそれを聞くと、「かしこまりました!」と言いましたが、アラジンは魔人が姿を消す前にかれをもう一度呼び、こう言いました。
「待ちなさい。それから、王さまの城のそばに、宮殿を建ててほしいのだ。人々が見たこともないような豪華で美しい宮殿を。これらすべてを、明日の朝までに用意してくれ!」

さて、翌朝になり、王さまは城の窓から外に目をやり、昨日まではなかったものを目にして、とても驚きました! そこには、城が ―― いえ、素晴らしく豪華で美しい宮殿が建っていたのです。

 しばらくすると、王さまの耳には、段々と近づいてくる騒動の音と、集まってきた人々の声が聞こえてきました。そこでその騒動に目をやると、そこには、朝の日差しを受けてキラキラと光り輝くかぶとや剣を身につけた兵士たちの集団や、輝く宝石がいっぱいにつまったふくろを抱えて歩く、長身で引きしまった体つきの従者たちがおり、その後ろには、美しい顔をした若者が大きな馬に乗ってこちらに向かっています。
 集まってきた人々にディナール金貨をばらまきながら。
 王さまには、もうそれ以上の説明は必要ありませんでした。かれはアラジンを娘むことして喜んで受け入れたのです。

 それから数日のうちに、アラジンと王女の結婚の祝宴が用意されました。祝宴には王国のあらゆる場所から人々がお祝いにかけつけました。こうしてアラジンと花嫁(はなよめ)は、きらびやかで広大な宮殿の中で、幸せに愛し合って暮らしました。

 アラジンはそれからも、自分の財産(ざいさん)を人々におしみなく差し出し、貧しい人々を助け、また金持ちには贈り物をし、すべての人々に愛されました。
 また、アラジンは国王軍を結成し、自分がそれを指揮して、敵との戦いに勝利しました。そのため、王さまはかれのことを、ひいでた将軍として、また知恵ある相談役として、そして信頼のおける娘むことして、たのもしく思っていました。








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