さて、あのうそつきの魔術師に話をもどしましょう。
かれは東部の自分の家にもどっており、じゅもんやら魔術の本やらにまたのめりこんでいました。しかし、かつての西部への旅やあのランプのことを忘れたわけではなく、かれはあのランプがアラジンの死体と一緒に今でもまだあのどうくつの中にねむっているのだと考えていたのです。
しかし、やがて西部の立派な将軍のうわさが東部にも伝えられ、その将軍がアラジンという名だと知ると、かれは怒り狂いました。そしてもう一度西部へもどり、今度こそ、何があろうとも、あのランプを手にしないうちにはもどらない、と決心したのでした!
魔術師は数ヶ月も旅をし、ようやく王国の首都に着きました。そこは、かれが初めてアラジンに会った場所からそう遠くないところでした。
王国でアラジンのうわさを聞きだすのは簡単でした。町の人々はみな、アラジンのことばかりを話していたからです。かれは気前が良く、おしみなく人々に財産を差し出し、勇かんで、慈悲深く、貴族たちの中でも最も知恵ある人物である……。だからこそ、王さまの娘むこになって王さまに信頼されるのも、無理のないことである、と。しかしそれを聞いて、魔術師のねたみや怒りはさらに激しく燃え上がりました。
魔術師は長旅の間に、どうやってあのランプを取り返そうかと、色々な悪だくみをくわだてていたのですが、ついにある計画の実行を心に決めました。そこで市場に行って新しくてピカピカの銅のランプをたくさん買いました!
翌朝、魔術師はそれらのランプをみなたずさえて、宮殿のある通りに出かけていきました。今アラジンは狩りの旅に出かけていて、留守であることを知っていたからです。
かれはアラジンの宮殿の近くで、おもむろにこう呼びかけました。
「さあさあ、又とないチャンスだよ! あなたがたの古びてさびついてしまったランプを、新品できれいなランプと交かんしないか?! さあ、古いランプを持ってきて、ここから新しいのを代わりに一つ持っていっておくれ!」
人々は声を聞きつけると、そのおかしなランプ売りの周りにみな集まってきました。
とても信じられないといった様子で。そしてみな、自分のうちにあった古いランプをそこにある新しいものと取りかえようと思いました。
王女はそのさわぎを聞きつけ、一体何があったのかと侍女にたずねました。そこで侍女は、まるで笑い話をするように、おかしなランプ売りのことを王女に話して聞かせました。するとそれを聞いた王女はこう言いました。
「信じられないような話だわ。それじゃあ、ためしてみましょう! じつはアラジンは自分の部屋に古いランプをしまっているの。わたしにはどうしてだかわからないのだけれど! だから、かれの身分にふさわしい新品のランプと取りかえて、かれをびっくりさせましょう。これを持っていって、あのおかしなランプ売りに新しいランプと交かんしてもらってきてちょうだい。」
魔術師侍女が手にしているランプを遠くから目にし、それが自分の探しているあのランプだとすぐにわかりました。そこで急いでかの女の手からそのランプを奪い取り、代わりに新品のランプをわたしました。それから、全身を喜びで満たしながら人ごみにまぎれて道をつっきり、自分の宿へともどりました。そしてランプをこすると、かみなりのような大きな音がして部屋がゆれ、やがてランプの魔人が現れたのです!
魔人はこうさけびました。
「ご主人さまの命令でまいりました、ランプの持ち主さま。何でもご主人さまのご命令どおりにいたします!」
そこで魔術師はこう言いました。
「よし。それでは、わたしとアラジンの宮殿を、その中にあるすべてのものと一緒に、国から遠くはなれたところへと移してくれ!」
そしてその通りになりました!
狩(か)りの旅からもどったアラジンは、とても大きなショックをうけました。家も愛する王女も姿を消していたのですから! かれは悲しみのあまり、思わず両手をこすり合わせました。するととつぜん、あの指輪の魔人が目の前に現れたのです。アラジンは、あやうくかれのことを忘れるところでした。そこでアラジンは、心配げに魔人にこう言いました。
「急いでわたしを王女のいるところへ連れて行ってくれ。それがどんなところであっても。」
すると一瞬のうちに、アラジンはもう王女のそばにすわっていました。2人が再会できた喜びはこの上もなく大きく、感動的なものでした。しかしやがて王女は泣き出し、こう言いました。
「アラジン、どうかわたしを助けてちょうだい! わたしには何が起きているのかさっぱりわからないのよ。」
アラジンがランプのことをたずねると、王女は、古いランプを新品と取りかえていたランプ売りの話をし、侍女が古いランプを持って出かけてしばらくすると、なぜかとつぜん、自分はあのおぞましい男と一緒にこのいやな場所にいたのだ、と伝えました。結婚してくれ、としつこくせまるあのおぞましい男と……。
そして王女はさらにこう言いました。
「アラジン、あの者はいったいだれなの? どうして鎖にあのランプをつないでずっと首にぶらさげているのかしら? わたし、かれが恐いわ! ほら見て、わたし、こうして毒入りの小びんを用意したのよ。あのおぞましい男が近づいてきたら、飲みほそうと思って!」
そこでアラジンはこう言いました。
「あれは邪悪な魔術師なのだよ。われわれはかれをやっつけなければならない。一つ計画があるから、君の役割をうまく演じてくれないか!」
その日の昼下がりに魔術師がやって来ると、王女はこわい気持ちをかくし、ほほえんでかれを出むかえました。そして、今までのことをわびるように、こう言いました。
「どうかわたしのそばにおすわりください。今までわたしはあなたに本当に冷たい態度を取ってしまい、礼儀に欠けておりました。しかし、もう元の場所にもどる希望はないのですから、わたしたちはお友だちでいるべきですわね。さあ、一緒に夜通しお話をしようではありませんか。」
魔術師は王女の心変わりを喜び、かの女の美しさをほめたたえる詩をよみ聞かせました。そこで王女は侍女を呼び、自分たちに飲み物を用意するように言いました。
王女はその侍女と秘策を立てていたのです。
やがて侍女は飲み物を持ってやって来ました。魔術師は、王女の心を手に入れた勝利の喜びでいっぱいだったので、何もためらわず、杯の飲み物を一気に飲みほしました。そう、王女の魔術がかれの魔術に勝ったのです!
すると魔術師は間もなく床にたおれこみました。王女が悲しみのあまり、死のうと思っていたあの毒によって。
その時、戸棚の後ろにかくれていたアラジンが飛び出してきました。そして、魔術師の首からランプを奪い、かれの死体を窓から投げ捨てました。それからランプをこすると、部屋がゆれ、ランプの召使いが現れました。そこでアラジンはかれにこう言いました。
「わたしたちを故郷へともどしてくれ。王女も宮殿もわたしも。」
そしてその通りになりました!
アラジンの宮殿は、王さまの城のそばに、また新たに高々とそびえ立ちました。
そして、王さまとアラジンのお母さんがかれらとの再会を果たすと、かれらは口で言い表せないほど大きな喜びに包まれました。
それからかれらはみな幸せに暮(く)らしました。そしてアラジンと王女は、2人以外にはだれも知らない安全な場所にランプをしまっておくことを、かた時も忘れはしなかったそうです!
終わり。
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