ある日、にせの叔父さんは、町はずれやその近辺のことをよく知っておくために、自分と一緒に城壁の外に出て郊外を回ってみないか、とアラジンに言いました。そこでアラジンは男と一緒に町の城壁から出てみることにしました。
2人は砂漠や岩山を越え、長い間歩きました。そしてとうとうあたりは暗くなり、かれらはつかれきってしまいました。町の明かりもはるか遠くになってしまったので、アラジンは男にこう言いました。
「町にもどらないのですか、叔父さん! ぼくはもうこれ以上歩けない。」
しかし男はアラジンを無視し、やがて立ち止まって厳しくこう言いました。
「わたしたちはここで夜を明かすのだ。だから薪を集めて来るがいい!」
それから2人は火をたき、暖まるためにその近くにすわりました。すると男はすぐに何やら奇妙なじゅもんのようなものを唱え始め、また、砂の上に何かわからない印を描(えが)き始めました。アラジンはそれを聞き、またそれを見て驚き、自分の叔父だというこの人物のことを、しだいにあやしく思い始めました。
するととつぜん、小山や丘にかかったかみなり雲が大きな音を発し、2人の足元の大地がぐらぐらとゆれました。それからもうもうと立ちこめたけむりの大きなかたまりが2人をおおい、激しく風がふきあれました。そしてそのあらあらしい風は、まるでその下の何かをおおっているかのような大きな平たい岩の上から、砂を巻き上げました。
魔術師は欲深そうに目をぎらぎらさせ、その岩を指さして、アラジンに厳しくこう言いました。
「アラジンよ、よく聞くのだ! この岩の下にはどうくつがあり、どうくつの回廊は階段のある庭へと続いている。その階段の一番上に銅のランプがつり下がっているのだが、そのランプは、言い表わせないほどの大きなパワーと富を秘めているのだ。
そして、そのランプは、おまえの名でふう印されていて、おまえ以外の者は持ち出すことができない。だから自分の名を告げてその庭に入るのだ。そうすれば、おまえには何も悪いことは起こらない。それから、行く時には周りにある物を何もさわってはならないが、ランプを持ち出した帰り道なら、庭の木の実をつんでもかまわない。
わかったか? それじゃあ、わたしのこの金の指輪をおまえの指にはめて行け。これがおまえを守ってくれるのだ。」
アラジンは恐ろしさで口が利けず、男に答えることができませんでした。それで魔術師の指輪を指にはめ、その岩を持ち上げるのを手伝いました。
アラジンはどうくつの奥へとおずおずと降りていきました。回廊をたどっていくと階段へと差しかかり、その階段は何だか変なにおいのするどうくつの暗い奥底へと続いていました。アラジンはこわくなってためらいましたが、あちこちの入り口からもれてくる光をたよりにしてさらに先に進みました。
それらの入り口を一つずつ通り越していくたびに、回廊は光を増していったので、その明かりでアラジンはあたりにある金や宝石がつまったたくさんの箱を見ることができました。しかしかれは魔術師にきつく言われていたので、それには決してさわりませんでした。
そしてついに庭にたどりつくと、そこは太陽の下にいるように明るく輝いていました。その時、アラジンはこのようにくり返して言うのを忘れませんでした。
「わたしはアラジンです。わたしの名はアラジンです!」
それから庭を横切って階段のところへいき、それを登ってみると、魔術師が言ったように、ランプがつるしかけてあったのです。
アラジンはランプをシャツの中におしこみ、帰り道を進もうとしましたが、その時、庭の木々にぶら下がる輝く実のようなものが目に入りました。赤や緑、そして山あいに流れる小川のような青い色、月光のようにすんだ黄白色の実……。
そこでアラジンはポケットや服の中に入るだけ、それらをつみました。その価値ゆえではなく、その美しさゆえに。かれのように貧しい少年に、それが高価な宝石であるとどうしてわかるでしょうか。それがその大きさや良質(りょうしつ)さから、値がつけられないほど高価なものだなんて! こうしてアラジンはそれらのものを服につめこみ、魔術師が待つ場所へともどっていきました。
アラジンは、回廊の入り口から出してもらおうと、にせの叔父(おじ)さんを呼びました。しかし魔術師は助けの手を差しのべる代わりに、心配げにこう言いました。
「ランプを持ってきたのか? 先にわたしにランプをわたすんだ。そのほうが登りやすくなるから。」
しかしアラジンは、どうくつに立ちこめたけむりの中で、こう答えました。
「ランプはわたしが持っています! でも、服の中に入れて持ってきたたくさんの実がランプの上にあって、ランプを出すことができないんです。ですからわたしを出してください。お願いです!」
それでも魔術師は冷たく同じことを命じ、どうくつから引き上げる前にランプをわたすよう脅しました。それを見てアラジンは、叔父と名乗るこの人物にさらに疑いを持ち、自分も同じようにゆずらず、こう言ったのです。
「ランプはわたしません。わたしがどうくつから出ない限り!」
すると魔術師は激怒しました。かれは、回廊の下のほうからランプを受け取り、それから岩を元通りにもどしてやろうともくろんでいたのです。しかし、アラジンをこわがらせようと思って、かれはここで本当にそうしたのでした!
すると急にどうくつの外のあらしが静まり、魔術師の目の前で、その岩は再び砂の中に姿をかくし、跡形(あとかた)もなくなってしまいました。魔術師はもう一度岩を元にもどそうとして、むなしくじゅもんやまじないを唱えてみました。しかし、どんなにくり返してもうまくいかないので、しかたなく、東部へと帰るしかなくなりました。そのため、かれの心は失われた財宝を思って、くやしさでキリキリと痛んだのでした。
一方、アラジンは岩の下の回廊の暗やみにすわりこみ、自分の運の悪さをなげいて身をふるわせました。あのにせの叔父(おじ)さんについての疑いも、これで確かなものになりました。
かれはこうしてどうくつに閉じこめられ、一人で岩を持ち上げられる望みもありません。それにかれのいる場所を知っていて、かれを助けることができる者は、あの邪悪な魔術師のほかにいないのです。アラジンの心は乱れ、自分の行く末を思って悲しみ、思わず両手をこすり合わせました。そしてそうするうちに、かれは魔術師からあたえられた指輪をも知らずにこすっていたのです。
すると突如、大きな音がしてどうくつがゆれたかと思ったら、アラジンは自分の目の前に、巨大(きょだい)な魔人が立っているのを見たのでした!
魔人は恐ろしいような声でこう言いました。
「わたくしはあなたにお仕えする者です、ご主人さま! 何でもお申し付けください。あなたの言う通りにいたします!」
それを聞くとアラジンは思わず、「わたしをここから出してくれ。お願いだ!」とさけびました。すると一瞬(いっしゅん)のうちに、アラジンは、自分が魔術師(まじゅつし)と一緒に火を燃(も)やしたあの丘の上にいるのに気づきました。時は夜明け前で、近くに魔術師がいる気配はありません。そこでアラジンは、自分の体を引きずるようにして町へもどり、ようやく家にたどり着いた時には、すっかりつかれ果てていました。
それを見てアラジンのお母さんはこうさけびました。
「まあ! 神さまに感謝します! 息子よ、よく無事でいてくれたこと! 帰りがずいぶんおそかったじゃないか。わたしはおまえを心配して病気になりそうだったのだよ。一体どこに行っていたの?」
そこでアラジンはお母さんにいきさつを話しました。邪悪な魔術師のことや、ランプのこと、そしてどうくつでのできごとなど。それからかれは深いねむりにつき、いびきをかきました。
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